緑内障の日帰り手術について

緑内障の日帰り手術は、眼圧を下げることで視神経のさらなる損傷を防ぐ治療方法です。当院では、患者さんの負担を軽減し、早期の回復を目指す日帰り手術を提供しています。高性能な医療機器と経験豊富な医師の技術により、安全で効果的な手術を実現しています。
特に、低侵襲緑内障手術(MIGS)や白内障との同時手術など、先進的な手術技術を取り入れることで、患者さんの術後の回復をより早く、より快適にすることを目指しています。
緑内障とは?
緑内障は、眼圧の上昇などにより視神経が徐々に損傷され、視野が狭くなっていく進行性の眼疾患です。初期には自覚症状がほとんどないため、定期的な検査による早期発見が重要です。適切な治療を行うことで、視野の悪化を防ぐことができます。
緑内障の主な症状
緑内障手術を検討するタイミング
緑内障の手術を検討するタイミングは、以下のような場合が考えられます。
点眼薬による治療で眼圧が十分に下がらない場合
点眼薬を使用しても眼圧が目標値まで下がらない、または視野の悪化が止まらない場合、手術を検討します。
点眼薬の副作用が強い、または使用が困難な場合
アレルギー反応や、高齢などの理由で点眼が難しい場合は、手術が選択肢となります。
急速に視野が悪化している場合
視野の悪化が早い場合、早期の手術介入が必要になることがあります。
白内障手術と同時に行う場合
白内障と緑内障を併発している場合、同時手術によりひとつの手術で両方の治療が可能です。
患者さんのQOL(生活の質)を考慮した場合
複数の点眼薬の使用が負担になっている場合、手術により点眼薬の本数を減らせる可能性があります。
入院手術と日帰り手術の違い
緑内障手術には、入院して行う方法と日帰りで行う方法があります。どちらを選択するかは、患者さんの状態、手術の種類、そして医師の判断によって決まります。
入院手術
入院手術の場合、通常1~3日程度の入院が必要となります。入院のメリットは、24時間体制で医療スタッフによる管理が受けられることです。特に手術直後の眼圧変動が大きい場合や、合併症のリスクが高い場合には、迅速な対応が可能となります。
また術後の安静が必要な場合も、入院環境でゆっくりと休養を取ることができます。看護師による適切な点眼管理も受けられるため、術後のケアが確実に行えます。
一方で入院には入院費用がかかることや、慣れない環境での滞在によるストレスが生じる可能性があるというデメリットもあります。
入院手術の特徴
- 24時間の医療管理、術後の急な眼圧変動にも対応可能
- 術後の安静が取りやすく、適切な点眼管理が受けられる
- 合併症のリスクが高い場合や、複雑な手術の場合に選択
など
日帰り手術
近年の手術技術や機器の進歩により、日帰りでの緑内障手術が可能になりました。日帰り手術の最大のメリットは、手術当日に帰宅できることです。これにより患者さんの身体的・精神的負担が軽減され、日常生活への早期復帰が可能となります。また、入院費用がかからないため、経済的な負担も軽減されます。
特に低侵襲緑内障手術(MIGS)のような比較的短時間で行える手術は、日帰りでの実施に適しています。例えば当院で行っているiStent inject®Wを用いた白内障との同時手術は、通常の白内障手術に数分追加するだけで完了するため、日帰りで安全に行うことができます。
ただし、日帰り手術の場合、術後の管理を患者さんご自身やご家族が行う必要があります。そのため、当院では術後の注意点や緊急時の対応について、詳細な説明と指導を行っています。
日帰り手術の特徴
- 患者さんの負担が少なく、日常生活への復帰が早い
- 入院費用がかからない
- 手術時間が短く、局所麻酔で行えるMIGSなどの低侵襲手術に適している
など
緑内障の手術は日帰りで受けることが可能
緑内障の日帰り手術は、近年の医療技術の進歩により可能になりました。特にMIGSの登場により、より多くの患者さんが日帰り手術の恩恵を受けられるようになっています。
日帰り手術のメリットとして、以下のような点が挙げられます。
- 入院の必要がなく、当日に帰宅できる
- 回復が早く、日常生活への復帰が早い
- 経済的負担が軽減される
- 緑内障点眼薬の使用本数を減らせる可能性がある
など
特にご高齢の方や認知症のある方にとっては、複数の点眼薬を正確に使用し続けることが難しい場合があります。そういった方々にとって、手術による治療は大きな助けとなります。
患者さんに最適な方法を提案

当院では、患者さんの状態、手術の種類、そして患者さんの希望を総合的に判断し、最適な手術方法を提案しています。例えば全身状態が安定していて、ご家族のサポートが得られる場合は日帰り手術をおすすめすることが多いです。一方、合併症のリスクが高い場合や、術後の眼圧管理に注意が必要な場合は、入院での手術をおすすめすることもあります。
どちらの方法を選択しても、当院の経験豊富な医師と高性能な医療機器により、安全で効果的な手術を提供いたします。手術方法の選択に不安がある場合は、遠慮なく医師にご相談ください。患者さんの状態や希望を踏まえて、最適な方法を一緒に検討いたします。
緑内障の検査
緑内障の診断と経過観察には、以下のような検査が必要です。
眼底検査(※散瞳が不要)
当院では超広角眼底カメラを導入しており、散瞳(瞳孔を広げる)せずに網膜の広範囲を一度に撮影することができます。
従来の検査では散瞳のための目薬を使用するため、検査後しばらくの間、まぶしさや視界のぼやけが続くことがありましたが、当院の検査ではそういった副作用がありません。そのため、検査後すぐに日常生活に戻れ、車の運転も可能です。
この検査により、網膜や視神経の状態を詳細に観察し、緑内障の診断や他の網膜疾患の有無を確認します。
眼圧検査
眼圧検査は緑内障診断の基本となる検査です。当院では非接触型眼圧計とゴールドマン圧平眼圧計の両方を使用しています。非接触型眼圧計は空気を目に当てて測定するため痛みがなく、スクリーニングに適しています。一方、ゴールドマン圧平眼圧計はより精密な測定が可能で、緑内障の診断や経過観察に不可欠です。
視神経乳頭検査
視神経乳頭の状態を観察することで、緑内障の進行度を判断します。当院ではOCT(光干渉断層計)を使用し、視神経乳頭の立体的な構造や網膜神経線維層の厚さを精密に測定します。これにより、緑内障の早期発見や進行の詳細な評価が可能となります。
視野検査
視野検査は緑内障による視機能の低下を評価する重要な検査です。当院ではハンフリー視野計を使用し、中心30度の視野を詳細に調べます。この検査により、緑内障特有の視野欠損パターンを検出し、病気の進行度を判断します。検査時間は片目約5分程度で、定期的に行うことで視野の変化を経時的に評価できます。
前眼部検査
細隙灯顕微鏡を使用して、角膜、虹彩、水晶体など目の前部の状態を詳しく観察します。この検査により、緑内障の種類(開放隅角緑内障や閉塞隅角緑内障など)を判断したり、他の眼疾患の有無を確認したりします。
隅角検査
ゴニオスコピーという特殊なレンズを使用して、房水の流出路である隅角の状態を観察します。この検査により、隅角の開き具合や異常の有無を確認し、緑内障の種類や重症度を判断します。
緑内障の治療
緑内障の治療は、主に以下の3つの方法があります。
点眼薬による治療
眼圧を下げる薬を点眼します。複数の種類を組み合わせて使用することもあります。
レーザー治療
当院では、マイクロパルス線維柱帯形成術(MLT)を行っています。線維柱帯細胞を破壊せずに眼圧を下げることが可能です。
日帰り手術
点眼薬やレーザー治療で効果が不十分な場合や、より確実な眼圧下降が必要な場合に検討します。当院で行っている主な手術は以下の通りです。
低侵襲緑内障手術(MIGS)
低侵襲緑内障手術(MIGS:Minimally Invasive Glaucoma Surgery)は、従来の緑内障手術と比べて低侵襲で行える新しい手術方法です。小さな切開で行うため、患者さんの負担が少なく、回復も早いのが特徴です。
MIGSの主な利点は以下の通りです。
- 小さな切開で行うため、術後の炎症が少ない
- 手術時間が短く、局所麻酔で行える
- 従来の手術に比べて合併症のリスクが低い
- 早期の日常生活への復帰が可能
- 多くの場合、日帰り手術で行える
など
当院では、MIGSの手術方法として以下の2つを行っています。
線維柱帯切開術(流出路再建術)
白内障と緑内障の同時手術「iStent inject W(白内障手術併用眼内ドレーン)」
これらの手術方法は、患者さんの状態や緑内障の程度に応じて選択します。
線維柱帯切開術(流出路再建術)
線維柱帯切開術は、MIGSの一種で、目の中から特殊な器具を使って線維柱帯(房水の流出路)を切開する手術です。この手術の目的は、房水の流れを改善し、眼圧を下げることです。
手術の流れは以下の通りです。
- 局所麻酔を行い、目の表面を麻痺させます
- 極小の切開(約1.8mm)を角膜に作ります
- 特殊な器具(マイクロサージカルデバイス)を使って、線維柱帯を切開します
- 切開部から房水の流出を確認します
- 器具を抜去し、必要に応じて縫合を行います
この手術の利点は、従来の緑内障手術に比べて低侵襲で、回復が早いことです。手術時間は約5~10分程度で、多くの場合日帰りで行えます。
iStent inject W(白内障手術併用眼内ドレーン)
iStent inject Wは、白内障手術と同時に行うMIGSの一種です。髪の毛ほどの小さなチタン製のデバイスを、白内障手術の際に挿入します。このデバイスが房水の流出を促進し、眼圧を下げる効果があります。
当院の緑内障日帰り手術のこだわり
経験豊富な医師による安全な手術
院長は大学病院や基幹病院での豊富な手術経験を持ち、先進的な技術を取り入れた安全な手術を提供します。特に緑内障手術においては、数百件以上の症例を担当してきた実績があります。この経験を活かし、患者さんお一人おひとりの状態に合わせた最適な手術計画を立案し、確実な手技で手術を行います。
高性能な手術機器の導入
当院では、緑内障手術に特化した高性能な機器を導入しています。例えば、手術顕微鏡(PMI Lumera 700)は高解像度で術野を映し出し、より安全で正確な手術を実現します。これにより従来よりも小さな切開で効果的な手術が可能となり、術後の回復も早くなっています。
低侵襲手術の積極的な導入
MIGSやiStent inject Wなど、患者さんの負担を軽減する低侵襲手術を積極的に取り入れています。これらの手術は従来の緑内障手術と比べて手術時間が短く、術後の炎症も少ないのが特徴です。そのため術後の回復が早く、日常生活への復帰も迅速です。また合併症のリスクも低いため、ご高齢の方や全身状態に不安のある方にも安心して受けていただけます。
白内障との同時手術
必要に応じて白内障と緑内障の同時手術を行うことで、患者さんの負担を軽減します。特にiStent inject Wを使用した同時手術は、白内障手術にわずか数分追加するだけで完了するため、手術時間の大幅な延長なく両方の治療が可能です。
安全性と効果を高める徹底したケア
当院では緑内障手術の安全性と効果を最大限に高めるため、術前から術後まで徹底したケアを行っています。術前には患者さんの全身状態を詳細に確認し、必要に応じて服薬調整や生活習慣の指導を行います。特に抗凝固薬を服用されている方には、手術リスクを最小限に抑えるための適切な管理を行います。
手術後は感染予防に細心の注意を払い、清潔な環境での処置と適切な点眼指導を行います。
定期検診による緑内障の早期発見
緑内障は初期段階では自覚症状がほとんどないため、定期的な眼科検診が早期発見の唯一の手段です。当院では、OCT検査や視野検査などの緑内障のスクリーニング検査を実施しています。早期に緑内障を発見することで、視神経の損傷を最小限に抑え、視機能を長期的に維持することができます。特に40歳以上の方や、緑内障の家族歴がある方は、年に1回の定期検診をおすすめします。