緑内障とは？
緑内障は目の視神経が徐々に傷つき、視野が失われていく進行性の眼疾患です。目の中には「房水」という液体が循環しており、この流れによって眼圧が一定に保たれています。しかし何らかの原因で房水の排出が滞ると、眼圧が上昇し、視神経を圧迫して損傷を与えます。
緑内障は初期段階では自覚症状がほとんどないため、「静かな失明」とも呼ばれます。40歳以上の約20人に1人が緑内障と言われており、年齢とともに発症リスクが高まります。しかし、若い方でも発症することがあるため、注意が必要です。
適切な治療を行わないと最終的に失明に至る可能性がありますが、早期発見・早期治療により視機能を長く保つことができます。定期的な眼科検診が重要です。
緑内障の症状
緑内障の主な症状には以下のようなものがあります。
視力の低下
緑内障が進行すると、徐々に視力が低下します。しかし初期段階では中心視力が保たれるため、気づきにくいことがあります。進行すると、読書や運転など日常生活に支障をきたすようになります。
視界のかすみやぼやけ
霧がかかったような状態や、ぼんやりとした見え方を感じることがあります。特に明るい場所で顕著に感じる場合があります。テレビの字幕が読みづらくなったり、遠くの景色がはっきり見えなくなったりすることもあります。
光がまぶしい
まぶしさを強く感じるようになります。特に夜間の運転時に対向車のヘッドライトがまぶしく感じられ、運転に支障をきたすことがあります。また、日中の屋外活動でも強い日差しに悩まされることがあります。
視野の欠損
緑内障の典型的な症状です。視野の一部が欠けたり、暗く見えたりします。初期は気づきにくいですが、進行すると日常生活に影響が出始めます。視野の欠損は、一度失われると回復することはありません。
視力に左右差がある（視力の不均一性）
左右の目で見え方に違いを感じたり、同じ目でも見る角度によって見え方が変わったりすることがあります。これにより立体視が困難になったり、距離感がつかみにくくなったりすることがあります。
目の疲れや頭痛
視野の変化に適応しようとして、無意識に目を凝らすため、目の疲れや頭痛を感じることがあります。長時間の読書や画面作業後に特に強く感じられることが多いです。
緑内障の症状は非常に緩やかに進行するため、自覚することが難しい病気です。日常生活で何か違和感を覚えたり、視界に変化を感じたりした場合は、すぐに眼科を受診することが大切です。また症状がなくても定期的に眼科検診を受けることが、緑内障の早期発見・早期治療につながります。特に40歳以上の方や緑内障の家族歴がある方は、年に1回の検診をおすすめします。
緑内障を放置すると…
緑内障を放置すると、以下のような問題が生じる可能性があります。
視野欠損の進行
緑内障は進行性の病気です。放置すると視野欠損が進み、日常生活に大きな支障をきたす可能性があります。
失明のリスク
適切な治療を受けないと、最終的に失明に至る可能性があります。一度失われた視野は回復しないため、早期治療が非常に重要です。
QOLの低下
視野欠損により、読書や運転、趣味の活動などが制限され、QOL（生活の質）が低下する可能性があります。
他の眼疾患との併発
緑内障の症状に気づかないことで、白内障や加齢黄斑変性症などの他の眼疾患の発見が遅れる可能性があります。
早期に適切な治療を受けることで、これらのリスクを軽減し、視機能を維持することができます。自覚症状がなくても、定期的な眼科検診を受けることが重要です。
緑内障の原因
緑内障の主な原因には以下のようなものがあります。
眼圧上昇
最も一般的な原因です。房水の排出が滞ることで眼圧が上昇し、視神経を圧迫します。
血流障害
目の血流が悪くなることで、視神経が酸素や栄養を十分に受け取れなくなります。
遺伝的要因
ご家族に緑内障の方がいる場合、発症リスクが高くなります。
加齢
年齢を重ねるにつれて、緑内障のリスクは高くなります。
近視
強度の近視は緑内障のリスク因子となります。
全身疾患
糖尿病や高血圧などの全身疾患も緑内障のリスク因子となります。
薬剤
ステロイド薬の長期使用は、緑内障のリスクを高める可能性があります。
緑内障の種類
緑内障には以下のような種類があります。
原発性緑内障
原発性緑内障は、他の眼疾患や全身疾患が原因ではなく、緑内障そのものが主な病気である場合を指します。眼圧上昇や視神経障害の原因が明確でないことが特徴です。年齢とともに発症リスクが高まり、40歳以上の方に多く見られます。
原発性緑内障には、開放隅角型と閉塞隅角型があります。
原発開放隅角緑内障
最も一般的な緑内障のタイプです。房水の排出路である隅角は開いていますが、徐々に眼圧が上昇し、視神経が障害されます。
正常眼圧緑内障
眼圧が正常範囲内であるにもかかわらず、視神経障害が進行するタイプです。日本人に多く見られます。
原発閉塞隅角緑内障
原発閉塞隅角緑内障は、房水の排出路である隅角が狭くなったり閉じたりすることで発症する緑内障です。急激な眼圧上昇を引き起こす可能性があり、緊急治療が必要になることもあります。虹彩が前方に膨らむことで隅角が塞がれやすくなる解剖学的特徴を持つ方や、遠視の方に多く見られます。
原発閉塞隅角緑内障
房水の排出路である隅角が狭くなったり閉じたりして、急激に眼圧が上昇するタイプです。
急性緑内障発作
閉塞隅角緑内障の一種で、突然の激しい痛みと視力低下を伴います。緊急治療が必要です。
発達緑内障（先天緑内障）
生まれつき目の構造に異常があり、乳幼児期に発症する緑内障です。
続発緑内障
他の眼疾患や全身疾患、薬物の副作用などが原因で発症する緑内障です。
急性緑内障発作に注意
急性緑内障発作は、閉塞隅角緑内障の患者さんに起こる可能性がある緑内障です。突然の激しい目の痛み、頭痛、吐き気などの症状が現れ、放置すると数日で失明に至る可能性があります。
主な症状
- 激しい目の痛みと頭痛
- 急激な視力低下
- 吐き気・嘔吐
- 目の充血
- 虹が見えるようなかすみ
など
急性緑内障発作の症状が現れたら、すぐに眼科の診察を受けることが重要です。早期に適切な治療を行うことで、視力を保つことが可能です。
緑内障の治療
緑内障の主な治療方法には以下のようなものがあります。
点眼薬による治療
最も一般的な治療方法です。眼圧を下げる薬を1日1～数回点眼します。複数の種類を組み合わせて使用することもあります。
レーザー治療
当院では、マイクロパルス線維柱帯形成術（MLT）を行っています。線維柱帯細胞を刺激して眼圧を下げる効果があります。
手術治療（日帰り手術）
点眼薬やレーザー治療で効果が不十分な場合や、眼圧下降が必要な場合に検討します。当院では、患者さんの負担を軽減し、早期の回復を目指す日帰り手術を提供しています。
当院の緑内障の日帰り手術の特徴
- 低侵襲緑内障手術（MIGS）を導入し、患者さんの負担を軽減
- 局所麻酔を使用するため、痛みはほとんどなく、身体への負担も少ない
- 小さな切開で行うため、回復が早く、傷跡も目立ちにくい
- 手術時間は通常20～30分程度で、当日中に帰宅可能
- 患者さんの状態に合わせた手術方法の選択が可能
- 術後のケアも丁寧に行い、安心して療養いただける体制を整備
など
また、必要に応じて白内障の治療を同時に行うことも可能です。